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カチカチと選び、広告をスキップするとベースの低音がきいた音楽がスタートした。僕の好きなバンドの楽曲である。少し満足した僕はもう1つのサイトを開いた。
「ピクサー」というサイト。一次創作も二次創作もイラストも漫画も小説も溢れており、何かの作品が好きだったり創作好きな人間には助かるサイトである。僕も、そしてあの女性も一時期遊んでいた。
「まだいるのかな…」
彼女が僕と話すことがなくなってから、彼女自身のアカウントを探すことはなくなっていた。不安なのか恐怖なのかわからなくなってしまっている手の震えを抑えながら、あの名前を検索する。
「ささき 夕音」
アカウントは消えていなかった。ただ、いなくなってしまう3年前で更新が止まっている。自傷行為が悪化していってしまった頃だったと記憶している。懐かしい。優しい色。かわいらしい少女たち。
なつかしい気持ちで涙で視界が潤む。
さかのぼっていくうち、僕は5年前の投稿に目を見張った。
「この”花と鏡”のキャラクターの半分を描きました!この空白の半分をお友達と描く予定です!楽しみ…!」
それは、僕と彼女が出会ってそこまで時間がたっていなかったころ。15歳の僕の拙いイラストを好きだと彼女はメッセージを飛ばしてくれた。僕自身、あの女性はイラストから入ったので、彼女のイラストは大好きだった。「花と鏡」という当時大好きだった作品が好きだということで、合作をしようという話になったのだ。薬のやりすぎで、詳しい記憶は残っていないし、完成したのかも覚えていない。
「懐かしいなぁ、このころは僕、男キャラ書くのが得意だって豪語してたんだっけ」
ふふっと先ほどの総合風邪薬の影響でぼんやりかつぐらぐらしつつも、笑みがこぼれた。ここまでなつかしさに笑ったのは久しぶりだ。
思えばこのころが一番よかったのかもしれないなあ。「ささき 夕音」とも話せて、浅いリストカットと鎮痛剤のオーバードーズで日々をやり過ごせていたのだから。
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