君の手くらい

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君の手くらい

いつもすぐそこに手がある。 だけど、その手は、私の手ではない。 その手を私は繋ぐこともできない。 いつも、その手を見てしまう。 誰が彼の手に触れるだろう。 そんなことを放課後、帰りながら思っていると 「…俺さ…」 「…え?」 「…好きな奴ができた…」 「…え?」 彼の口からの言葉に驚きを隠せない。 「それでさ…告白しようかなと思ってて…」 「え?」 彼は、照れた顔を隠す。 「どう思う?」 「…別に…いいんじゃないのかな…」 「本当に?」 「…う…うん…」 彼に好きな人がいたのか… 彼の隣で、胸が苦しくなる。 ずっと、好きだった。 それは、私にだったら、良いのになって、思ってしまう。 私という訳ではないのに。 「…でさ…」 「…」 「…その…」 「…?」 「そういつさ…」 「…」 彼の顔が見れない。胸が苦しい。痛い… 「…古くからの知り合いでさ…」 「…」 「高校くらいから急激に可愛いく見えちゃって…」 「…」 私だったら、良いのになあって。なんて。 「でもさ、前は友達みたいな感じだったし、なんか、告白しづらいなって」 「…そっか…」 その手は、きっと、誰かのものになるんだ… 一度でも彼の手を見てから、手くらい…って… 友達なのに…友達だよ!なのに、それってキモいよね… 自分で自分に言い聞かせる。 「…ごめん….私、用、あったの、忘れてた….ごめん、先に帰るね」 「…おい!ちょっと待て!おい!」 私は、すたすたとその場から去っていく。 目からは、大粒の涙が溢れてしまう。 「…」 何でだろう…何でだろう…今までだって、そんなこと、何回もあったのに…
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