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「俺は不幸に見えるか」
杏奈は首を横に振った。
「はははっ、そうか。それは良かった」
高田さんは笑った。
「幸せそうに見える。いつも笑ってるし・・」
杏奈は少し伏し目がちに言った。高田さんがそんな杏奈を見下ろすように見る。
「なんだ?悩みごとか?」
そんな、杏奈の様子に高田さんが訊いた。
「・・・」
「金以外の悩みなら何でも聞くぞ。はははっ」
「・・・」
杏奈はしばらく、高田さんの隣りで、俯いていた。
「人生って何?」
杏奈は顔を上げ高田さんを見た。
「はははっ、大きく出たな」
「私は真剣よ」
杏奈は高田さんを真剣な表情で見た。
「はははっ、そうか、悪い悪い」
「本当になんだか分からないの」
「人生・・、か。う~ん、それは難しい問題だな」
高田さんはしばらく手を止め、首を傾げていた。
「勉強しろって、良い大学行けって、ちゃんと就職しろって、それが現実だって、先生やお母さんたちはみんなそう言うわ。それはなんだか違う気がするって言っても、現実を見ろって、どうやって生きるんだって、そればっかり。お金が無かったら、辛いぞって。惨めな思いするぞって。老後はどうするんだって・・」
「う~ん、まあ、正論だな」
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