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「でも、なんだか、私は違う気がするの。うまく言えないけど・・」
「まあ、別にがんばることも悪くないし、いい大学、いい就職、いい結婚も別に悪いことじゃないけどな。それにお金が無いことは確かに辛い。はははっ、老後も不安だ」
「うん・・」
「でも、それだけじゃない。人生は。それは言えるな」
高田さんは、眉を大きく上げ、杏奈を見た。
「うん」
「それに一生懸命勉強したって、俺みたいな奴はいるさ。人生何が起こるか分からない。勉強していい大学、いい就職イコール安泰なんてのは幻想だよ」
「実際、俺の知り合いには大学出て、日雇いやってる連中なんて珍しくもない。はははっ」
「その中には、かなり良い大学出てる奴もいるぞ」
高田さんは杏奈を見た。
「うん」
「参考になったかな」
「そんな話してくれるの高田さんだけ」
「そうか。ははははっ」
でも、杏奈はやはり浮かない顔をしていた。
「自分の人生さ、どう生きるかは自分で決めればいい」
「うん」
「人生なんて人それぞれさ。生まれた時から障害を抱えてる奴もいるし、病気になる奴もいる、戦争や貧困に巻き込まれる奴、虐待や孤児、いろんな人生がある」
「うん」
そこで高田さんは、もう一度タオルをバケツの水でゆすいだ。
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