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「皮肉な話だけど、今回の事件でキルケーを世間が認識するようになったわ。わたしも、正式に研究者としての席を得られそうなの」
「それは良かった。おめでとう! いや、そう言っていいか分からないけど」
自分のことのように喜びかけるも、やはりどんな顔をして良いか分からず戸惑う久我山に、芳野は笑う。
「ありがとう。ねえ、今度一緒に食事でもどうかしら? 瑞希くんも元気になったところで、3人で」
「お、いいね、それ」
3人ならあいつもダメとは言わないだろうと久我山が考えているところに
「おーい! 久我山ぁー!」
井苅のだみ声が廊下に響いた。
「っと、すみれさん、また今度ね」
ベンチから慌てて立ち上がり駆けて行く久我山の背中を、芳野は見送った。
(了)
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