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前方から来た車に衝突されたため、助手席に乗っていた絵理子の右膝から下は潰れた車の前部にはさまれて複雑骨折し、これまで三回ほど手術をしたにもかかわらず、脚は元には戻らなかった。びっこを引くことになり、季節の変わり目には痛くなることが多い。
事故の後、気づいた時には病院のベッドにいた。あたりを見廻すと白い服を着た看護婦さんの後ろ姿しか見えず、母はもうこの世からいなくなってしまったらしいということが、幼心にも何となくわかった。
心細さのあまり布団の中で猫のように縮みこもうとすると、ギブスをはめられて動かない脚に激痛が走った。
母はシングルマザーで絵理子には父親がいない。母方の祖父母は飛行機事故でその数年前に他界しており、一人っ子の母には兄弟もいなかったので、絵理子は祖母の歳離れた姉である大伯母に引き取られることになった。
それまで面識のなかったその大伯母が病室を訪れ、母が亡くなったことを告げられた時、絵理子を襲ったのは悲しみというより後悔だった。
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