とける

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高校の授業は、私が集中を切らしていても進んでいく。自分の顔がどうなっているのか、どうしても考えてしまい、鞄から小さな鏡を取り出してしまった。 こっそりのぞくと、朝には形を保っていた、首までとけだしていた。 恐怖で鏡を勢いよく閉じる。 その閉じた手が、とけ始めていないのかという考えが浮かび、目を向けた。 まだ手はとけていない。 だが、時間が経つにつれて、だんだんとけていっているという意識をはっきり持ってしまった。 また、今朝のように、不安を忙しさで誤魔化そうとした。 これはどうでもいいことなんだ。だって、私には他にやらなきゃいけない事が山ほどある。授業は進むし、先生に頼まれた部活の雑用や、委員会、塾、きりが無い。 だから、もう自分の姿を見ないように、教科書をひたすら読み続けた。
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