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高三の春、担任となった彼女に伸彦は徐々に憧れ始めた。教師と生徒といった関係上そこまでのめり込むことはなかったが、前回卒業後に会ってからというものの彼女の存在がどんどん大きくなっている。
美優の年齢を知った今でも伸彦は何とも思わなかった。元々歳上好みだったのだろうか、同級生の女子には何の魅力も感じなかった。どちらかと言えば冷めた目で見ていた節もあった。
そのことを考える時、伸彦にはどうしても気になることがあった。美優に恋人が居るかどうかといった問題だ。休日に一人で映画を観に来ていたが、あれはたまたまだったのだろうか。何度もメールか電話で聞こうと思ったが、伸彦にはその勇気がなかった
シフト制の職場なので、二週間前になってようやくこの日に休みが当てられたことを知った伸彦は恐る恐る彼女へ今日の誘いのメールをした。
美優からの返信は「まさか本当に誘って貰えるとは思わなかった。ありがとう」といった内容だった。
これがまた伸彦を悩ませた。
まさか、というのは前回の彼女からの誘いは冗談のつもりだったんだろうか。
彼女の意図がいまいち理解出来なかった。
そこへ美優が戻って来た。
「ねえ津島君、今日は食事も付き合ってくれるんでしょ?」
「え?あ、はい」伸彦もそのつもりだったので少しほっとした。「あ、一応席だけですけど予約した店があるんですよね」
「え、そうなの?どこどこ」
「すぐ近くのイタリアンですけど」
「やったあ!行きたい行きたい」
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