五月十六日 火曜日

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五月十六日 火曜日

 十、十一、十二、十三。  十四、と数えてオーバーハンドでボールを上げた瞬間、開けていたツリーハウスの窓から強い風が吹き込んだ。風に煽られ、ボールの落下地点が右にずれる。  「ありゃ」  バン、とテーブルに当たったボールは、そのまま弾んで、寝癖がついたままの巧哉(たくや)の頭に見事ヒットした。  「()て」  「ごめん!」  (あや)は立ち上がってすぐさまボールを回収しつつ、巧哉の頭を覗き込んだ。巧哉は頭の当たったところを恐る恐る触って、感触を確かめている。  「たんこぶできた?」  恐る恐る聞く。  「……大丈夫。できてないよ」  「はあ。良かった」  思わず肩の力が抜けた。ボールが頭に当たることなんて、バレー部で練習していると日常茶飯事だけど、そうじゃない人は慣れていないので結構痛いはずだ。彩自身はもうその程度の痛さは全然平気で、ある意味で感覚が麻痺してしまっていると思う。本気で痛いと思うのは、スパイクを顔面でブロックした時くらいだ。  ボールを胡坐の真ん中に収める姿勢で座り直す。また巧哉に当たると悪いので、オーバーハンドはもう止めることにした。  「そろそろ高体連の季節だね」  息抜きなのか、巧哉が話しかけてくる。本に再び没頭していると思っていたが、どうやら集中力が切れてしまったらしい。  「うん。あとちょっとで始まる」  「バレーはいつから?」
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