四月二十一日 金曜日

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 「茶道部のポスターできたから。今週中に渡したくて……」  「おー! ありがとう! なんか焦らせちゃってた?」  「そんなことないよ。どうして?」  「思ってたより早く書いてくれたから。急に頼んじゃったし、もっとかかると思ってたよ」  「来週から勧誘始まるって聞いてたから、それに間に合わせたくて」  「もー、立花優しいなあ」  沖島はそう言って、長谷部に体を寄せて少しどつく。長谷部は褒められたからか少し照れた表情をしているが、沖島に当たられても満更でもなさそうだ。そのまま二人でテーブルに向って座る。  巧哉からすると、沖島と長谷部の距離感は、心身ともに年々近くなってきているように見える。友達にしては近すぎると感じる巧哉には理解できないが、女子同士の友人関係は案外こういうものなのかもしれない。  「見てもいい?」  「いいよ」  沖島が丁寧にファイルの中身を取り出す。そして歓声を上げた。  「うわー! すごい! きれい……」  目を輝かせてポスターを眺める。長谷部はその横で恥ずかしそうな顔になる。  「巧哉も見て!」  腰を上げて近寄り、二人の間からポスターを覗き込んだ。部の名前と活動の詳細が縦書きで記されていて、左側にイラストが描かれている。着物を着た女性がお茶を立てており、その周りには桜の花びらが添えられていた。背景は、ページの端に向かって濃くなる紫色のグラデーションになっている。華やかで目を引くが上品さを欠いていない、茶道の雰囲気がよく表れているポスターに仕上がっていると思った。  何よりも絵の筆致に目が行く。細い線で描かれた女性や花びらは、形や大きさのバランスもいいし、柔らかで繊細な印象だ。絵のテクニックや優劣は、巧哉のような素人には分からない。でも、かなり上手い部類に入ると思う。  「すごいよね!」  「うん、きれいだ」

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