金縛り…?

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 最初に感じたのは、手足の指のじわじわとしたしびれ。寒い外から帰ってきて、冷気と重さをまとったコートを脱ぎ、君の待つ暖かな部屋に入ったときと、その感覚は似ていた。  そう、うまく流れていなかった血が、毛細血管の先の先まで届いていくような、そんな感じだ。  次第次第に、ぼんやりとした熱が広がっていく。同時に視界がだんだんと明るくなっていく。  眩しい光は、暴力的に僕を叩き起こそうとする。でもひどく眠い。まだ眠っていたいんだ。ほら、身体も動かない。  もう、休みの日だからっていつまでも寝てないの!  カーテンを開けて強制的に僕に光を送りながら、君はいつもそう笑うから、ここで目を開けたら窓辺には君がいて、君が一目惚れして買った北欧風のリーフ柄がおしゃれなカーテンを目一杯開けているのだろう。  でも、まだ眠いんだ。もうちょっとだけ。僕は光から逃げるように寝返りを打とうとする。…そして気づいた。身体が動かない。拘束されている風ではないけれど…これが、金縛りってやつか?  こういうときはどうすればいいんだっけ…動画サイトで観たオカルト動画では、確か金縛りは脳と運動神経の連携が解除されている状態、つまり頭は起きているけど身体はまだ寝てる状態だから、落ち着いて少しずつ指先や唇、まぶたなんかを動かして、身体が起きたってことを脳に教えるといいとかなんとか。パニックになるのが一番良くないらしい。  大丈夫…落ち着け…  しばらく頑張っていたら、微かにまぶたを動かせた。ほとんど痙攣みたいなものだったけど、確かに動いた、と感じた。  次の瞬間、全身がふっと軽くなり、まぶたを完全に持ち上げることができたのだけれど…  まぶたの覆いを外された僕の目に映ったのは、窓でもリーフ柄のおしゃれなカーテンでも、ましてや君でもない、思いもかけない光景だった。
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