思いもかけない目覚め

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 とにかく、すべてが白かった。そして無駄に眩しくて、冷たく見えた。つまりそれらが清潔なのだとすぐわかった。  病院…? 「目が覚めましたか」  戸惑う僕の横から静かな声がして、まだうまく動かせない視界に、頭がにゅっと入ってきた。THE お医者さん! という感じの、広くて賢そうなおでこをした、僕より10は歳上っぽい銀縁眼鏡の良く似合う男性。白すぎて青ずんですら見える白衣が白い部屋の中でさらに眩しい。冷たく清潔な部屋にぴったりな理性的な目が、僕を無遠慮に観察した。 「バイタルオールグリーンです」  お医者さんの肩越し、看護師さんらしい女性の声が無機質に聞こえてくる。 「了解。ハイバネーション終了を確認した」  僕を見たままお医者さんが答えると、いろんな人がざわざわとせわしなく部屋を出たり入ったりする気配が、部屋に渦を巻く。  その渦の中で、僕を見るお医者さんと、動けない僕だけが、じっと静かだった。  ここは病院ですか  そのシンプルな質問は、しかし声にならなかった。何でもなくできていたはずの発声が、まるではじめてのことのようにうまくできない。  僕の瞳に焦りが浮かんだか、お医者さんは小さく顎を動かした。 「心配ありません。まだ末端まで解凍が完了していないので動かしにくいだけです」  …かいとう?  漢字が浮かんでくるまでに数秒かかった。
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