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ぼくはおとこのこ。
きのうはサッカーをしてあそんだよ。
みんなつよいんだ。
あしもはやいし、ボールもとおくにとばしちゃう。
ぼくもいっしょ、みんないっしょ。
まわりをみたら、たくさんのひとがいる。
みんなぼくといっしょ。
あるいたり、たべたり、しゃべったりするもん。
おとこのことおんなのこはちがうけど。
それでもあるいたり、たべたり、しゃべったりするのはいっしょ。
たくさんのひとがいっぱいいっしょにいるんだ。
みんなだれなんだろう。
あのこはぼくのともだち。
あのひとはぼくのせんせい。
じゃあぼくは?
ぼくはだれなんだろう。
おかあさんにきいてみた。
へんなかおをされた。
おとうさんにきいてみた。
おおきなこえでわらわれた。
ともだちにきいてみた。
「なにいってんだ?」ってかえされた。
のらねこにきいてみた。
にゃー、ってねむたそうにないた。
だれもこたえてくれない。
さいごにせんせいにきいてみた。
「あなたはあなたよ、ほかのだれでもないあなたなのよ」
そうかえされた。
ぼくにはちょっとむずかしくて、そのことばのいみがわからなかった。
でも、なんだかちょっとうれしかった。
ねるまえにおとうさんははなしてくれた。
「おまえはおれのむすこだ、よくあそんで、まいにちあさごはんにパンをたべて、かみひこうきがだいすきな、だいじなだいじな、おれのむすこだ」
ぼくはとってもうれしくなった。
ぼくがだれかわかったんだもん。
ぼくはぼくなんだ。
せかいにひとりだけのぼくなんだ。
こうえんのブランコに、なきながらうずくまっているおんなのこがいた。
「きみはだあれ?」
そうきいた。
おんなのこはこたえた。
「わからない」
だからこうかえした。
「きみはきみだよ」って。
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