6人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
彼女たちへの処置
彼の携帯電話から、彼女とのラインのやりとりを見る。
だんだんトークがフランクになり、デートの約束をする。
彼は何でいつも、二回目のデートからお泊まりするんだろう。
思えば、わたしのときもそうだった。
わたしの今の勤めているクリニックは、週に一度しか夜勤はない。
先生の自宅は裏にあり、奥さまも看護師だ。
看護師は奥さまの他に六人いるが、奥さまを含め三人で夜勤を交代している。
奥さまが少し細かい方なので、すぐに辞めてしまうナースもいる。
が、わたしは奥さまには気に入られている様だ。
奥さまからは、わたしは真面目できちんとした性格だと誉められる。
そう言われるなら、そうなのかもしれない。
先生も奥さまも六十代をすぎていて、大病の若い患者は、大手の病院に紹介している。
なので、少ない入院病棟にいるのは、ご高齢の患者さんばかり。
元気に退院する方もいるが、亡くなられる方も多い。
その内の何人かはわたしが殺してあげた。
先生に
「もう楽にしてください」
と言っていたからだ。
先生は痛み止めの点滴を打ってらしたが、患者さんが望んだのはそれではない。
みな、大きな息を吐くと、穏やかな顔で亡くなられた。
本望だったと思う。
「みどりが夜勤だから、実家に泊まってくるよ」
というのが、彼の病気の始まり。
薬剤の在庫も任されているわたしは、廃棄する注射器を何本か家に持ち帰っている。
消毒液もだ。
次亜塩素酸ナトリウム。
5CCもあれば、人は死ぬ。
彼の病気も、ひどくなる前に処置しなければ。
最初のコメントを投稿しよう!