月に濡れたふたり

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6904cb04-c91d-4fd2-8e42-464c2f095021 それからというもの常に編集長の顔色を伺うようになった。当然と言えば当然の結果。 編集長の旦那と寝たんだから。 『内田さん!』って呼ばれる度にビクつく女。     そしてエリは相も変わらず     そんなわたしを見てニタニタする。 あれから保には会っていない。    というより会う勇気が出ないというか      根性がなくなったというか それでも家に帰って        暗くて冷たくて      無意味に豪華な部屋の中で     一人で飲む酒はやっぱり虚しくて 思わず保にラインする。 保から送られて来る愛の言葉たち。      それが今の心の安らぎ。          そして身体の安らぎ。 ーー保、何してる? 返信に時間がかかると途端に落ち込み、    そして不安になり、やがては怒り出す。 戻らない言葉をずっと待ちながら      ハイボールを傾ける暇な時間。   目の前にはただ無意味に流れる恋愛映画。 今夜は『ケビンコスナー』主演の『A message in a Bottle』。 悲しすぎる恋愛映画。 亡くした奥さんを思い続けた男が、一人の女性に出会いようやく前向きになれたときに、溺れようとしていた親子を助けて、その為に海で死んだ話。 もう何回観たか分からない。      何回泣いたか分からない。 自分の境遇とは違うけど…それでもどこかだぶってくる。 結局、その夜は『虚しい一人寝の女の言葉』が戻って来ることはなかった。
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