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ーーチッ…
上目遣いに爬虫類が獲物を狙った
そんな視線を送るみたいな
あからさまに不機嫌なドアを閉める音が
壁の向こうから伝わる。
エリと顔を見合わし首をすくめ
編集室に急いでいたわたしにぶつかる女。
「あ、ごめんなさい」
その女は微笑むと急ぎ足で走り去る。
「誰?」
ぶつかられた肩を押さえてエリを見る。
「1階の喫茶店の人よ。いつも愛想が良くてコーヒー持って来てくれるじゃん」
「そうだっけ?」
「ホント華は女に関心ないっつうか」
「何それ?わたしが男しか興味ないみたいじゃん」
「そうじゃん?」
「そんなことない!」
その出会いがわたしと彼女の運命までも大きく揺り動かしていくことなど知る由もなかった。
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