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いつも保が先に入りわたしが後から入る。
部屋はいつものダブルの部屋。
入る前に電話して交わす言葉。
入る前から高鳴る鼓動。
それでも今日はどこか気が重い。
理由なんて簡単。
あの女のせい。
部屋を軽く4回ノック。二人だけの情事の合図。
ドアとともに開く女の時間。
すぐに保に抱きしめられ始まっていく時間に
溺れていく二つの満たされない心。
「ごめん…ちょっと待って」
と両手で胸を押すと不機嫌そうに細長い目をさらに細め眉をひそめる保。
「どうしたの?」
彼の唇に右手の人差し指をあてて
「その前に聞かせて」
と止まる『時』ーーーー。
「何を?」
「保の奥さんって?」
「華の部署の編集長だけど、どうかした?」
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