月に濡れたふたり

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2117144f-f9a7-45a8-9bd1-db05565e7a4f 保の横をすり抜け部屋のソファに     深めに腰掛けるのと同時に  テーブルに置かれた彼の煙草に火をつける。 フーーっ… 「やっぱそうなんだ」 「知らなかったん?俺、最初から知ってると思って」 「アンタ…スマホとか見られてない?」 「ロックしてるから、お互い」 「なら良いけど」 煙草の煙と匂いが充満していく空間で     深く沈んで行こうとする気持ちを      どうすることもできない。 「別れたいの?華は」 その問いには答えず 「一緒にシャワー浴びる?」 ゆっくり服を脱ぎ始めた。 湯船にお湯をはりながら    キスを交わしながらお互いを清め合う。 お互いの手でお互いを…。 キスしながら 「別れたい?」 と甘えた口調で言われると 無意識に「ううん」と舌を絡めた。 結局はまたいつものように     一人の時間に戻りたくなくて       別れるという選択を袖にやる。 会えるのはほんの月に一、二度なのに      その僅かな安らぎがなければ       生きることがただ辛い。 身体と心がお互いを欲するのだから。
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