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2週間が過ぎた頃、エリが営業先から戻って来る途中、改札口を出たところで後ろからぶつかってきた一人の男がいた。
「あ、いたっ!」
「すみません。急いでるんで…」
それは大きい紙袋を両手に抱えた保。
「タモリん?」
「おーっエリじゃん」
「何そんな急いでんの?」
「嫁に買い物頼まれて」
「あーね」
「じゃ!」
「あ!タモリん!アタシとのこと華に喋ってないよね」
「当たり前じゃん。言えるわけないじゃん」
「ならいい。ほら急いで!」
「あ…じゃ」
その日の夜遅くというか日付が変わる頃ーーー
ベッドの中でゴロゴロしながらも
一人で慰める時間に身を委ね、
なかなか眠れずにいると鳴り出す
スマホの着メロ。
ーータモリん…
こんな時間に?
「もしもし」
少し息を整えるも微かに漏れる吐息。
「華、まだ起きてた?」
「あ…うん」
「どうしたの?」
少しだけ甘えた口調。
広すぎるベッドの中でこの前の情事を思いながら受話器越しの声を待つ。
「うん…」
「今、家じゃないの?」
「タバコ買いにコンビニ」
「そうなんだ…」
「華の声が聞きたくて…」
「そうなんだ…」
嬉しいくせにわざと素っ気ない返事をする女。
彼を欲しがる気持ちがそうさせる。
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