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電話を切っても耳の奥に残る声色に
また惑わされる。
見えない胸の囁きが保に届くことはなくて
その虚しさを搔き消すために
ベッドから出て月夜の灯りに濡れる。
その灯りに照らされるわたしの心は
どこを目指して何処を見てるのだろう?
乱れた姿のまま怖い程高いベランダから
外を見下ろし少し離れた港で点滅する
赤いランプに問いかける。
ーー保のことが好きなの?
そう思おうと無理してるの?
涙と愛しさと
どっちを選ぶの?
ただ寂しいひとり寝の時間を埋めたい女と
ただ存在を掻き消された男の寂しさが
ぶつかり合うだけの
錯覚だらけの恋ーーーー
分かっていても戻らない二人。
どんなに声が聞きたくても
自分からは電話もできない。
そんな恋を選んだのは自分。
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