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深くタバコを吸い込んでは思い切り吐き出して、わたしの目は見ずに東京タワーの右側に沈みかけた琥珀色の夕陽を見るエリ。
「わたしにも頂戴」
と右手の人差し指と中指を伸ばすと
タバコを一本取り出して
渡してくる目の奥が光って見えた。
エリが火をつけてくれる。その手は小刻みに震えていた。
夕陽に染まりかけた屋上に佇む二つの心。
その中に溶け込もうとする言葉たちを探す二人の女。
タバコを吸い終わる頃、エリが重たい口を開く。
「もしかしてさ華」
「ん?」
「タモリんとアタシのこと誰かから聞いた?」
ーーエリとタモリんのこと?
何それ?
すぐに出ない言葉の狭間で巡る思考。
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