月に濡れたふたり

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5c51e3a4-c194-45e2-aa42-640e1784382d 「そんなことないと思うんだけど。ただ…」 「ただ何?」 「先週の火曜日の夜、エリは営業に出てたから知らないと思うんだけど…」 夜、8時少し前帰ろうとしたわたしを      いつものように呼び止めた女。 ーー内田さーん、ちょっといいかな?          またか… ーーはい、何ですか? ーー再来月号の特集企画のことなんだけど…         はいはい… その日はいつもと様子が違った。    下からわたしの顔を覗き込むように    斜め45度くらいにじとーっと見上げて…    こんなことを言った。 ーー今度の特集のテーマは『不倫』で行こうと思ってるんだけどね…内田さん、経験あるよね? わたしの中のボキャブラリーでは    対応不能な問いかけに頭の中は真っ白。    この女は何を言い出すんだって思った。 多分、わたしの女狐を見る目は不機嫌さを露骨(ろこつ)(まと)っていたと思う。
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