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「そんなことないと思うんだけど。ただ…」
「ただ何?」
「先週の火曜日の夜、エリは営業に出てたから知らないと思うんだけど…」
夜、8時少し前帰ろうとしたわたしを
いつものように呼び止めた女。
ーー内田さーん、ちょっといいかな?
またか…
ーーはい、何ですか?
ーー再来月号の特集企画のことなんだけど…
はいはい…
その日はいつもと様子が違った。
下からわたしの顔を覗き込むように
斜め45度くらいにじとーっと見上げて…
こんなことを言った。
ーー今度の特集のテーマは『不倫』で行こうと思ってるんだけどね…内田さん、経験あるよね?
わたしの中のボキャブラリーでは
対応不能な問いかけに頭の中は真っ白。
この女は何を言い出すんだって思った。
多分、わたしの女狐を見る目は不機嫌さを露骨に纏っていたと思う。
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