月に濡れたふたり

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e2038258-4059-4207-80ba-64bd84a6af34 「じゃこれからアタシ営業先に行かなきゃいけないから、また電話する」 そう言い残しエリが出て行った後も      屋上で東京タワーを見ながら      一人闇に包まれ、 タモリんとの恋も闇の中の悪魔にがんじがらめにされていく。 手元で光るスマホ。       タモリんーーーーー。          ごめん…     タモリんの声聞いてしまったら…        泣いちゃうから… ひとり寝の夜が怖くて、      その恐怖から逃れたくて…      タモリんとの『今』という    刹那(せつな)の恋に隠れようとしていただけ? 誰かに必要とされることがどれだけ嬉しくて、どれだけ(いた)んだ心を(なぐ)めてくれるかーーーー でももうそれだけじゃ続けられない。 いつしか東の空から上り始めた真ん丸な月に照らされた女はみすぼらしくて、行き先さえなくて…         ーータモリん…         もう無理かも…         仕事を選ぶの?       それとも会社を辞めて…   タモリんとの関係を続けることを選ぶの? それでも今からデザイナーとしての仕事なんか、この歳で見つかる筈もないことも分かってる。 行き先の無い列車に放り込まれ、        その車内には多分、         不倫で悩む女性たちが        わたしの周りを取り囲んで      地獄の底へ連れ去ろうと見ている。
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