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ーーげ…太郎ちゃん…
うわー
こんなとこ見られとおなかったし…
焦るエリ。
横でニヤけるわたし。
爽やかな太郎ちゃん。
わたしたちの間では三枝編集長は『太郎ちゃん』で通っている。
彼は笑顔も仕草も服装もすべてが爽やか。これで結婚していないのだから、世界の七不思議のひとつって社内の女子はみんなそう噂していた。
「いいね、これ。再来月の企画ページだろ?」
とわたしを見て微笑む。
ーーこの声…どこかで聞いた?
「俺にもチキン一つくれよ」
「は…はい…どうぞ」
緊張しまくるエリのチキンを彼に差し出す手は震えている。
「でも毎回、毎回、香織は無茶振りするよね。大変だろ?華ちゃんも」
ーー華ちゃん?
どうしよ?
わたしまで心臓が激しく脈打つ。
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