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ーータモリん…
いま会ってもどうしていいか、どんな答えを出していいか分からず、無意識に踵を返して東側の中庭に走ってしまった。
逃げるわたしを見つけたタモリんは直ぐに追いかけてきて、元々かけっこも遅かったアタシの脚で逃げ切れるわけもなく、中庭の角を曲がったところで手を掴まれた。
「ねえ!華!待ってよ」
「どうしたの、保?そんな怖い顔して。離してよ!痛いじゃん!」
「あ、ごめん。でもなんで俺を避けるの!ねえ!」
「…」
「ねえ!華!なんか言ってよ!メールも電話も出ないし、営業に行った時でさえ目も合わせないし…このままじゃ俺、どうにかなっちゃいそう。ねえ!華は俺のこと嫌いになったの?」
掴まれた腕を振り解こうとしても解けない。
「ねえって!何とか言ってよ!」
「…」
保はアタシの肩を両手で掴んで問いつめる。それでも彼の問いに答えることできない。
答えてしまえば…この恋が終わってしまう。
目を見てしまえば…泣いてしまう。
心を晒け出せば消えてしまう。
「ごめん…」
タモリんの手を振りほどこうと大きく手を振り上げた瞬間、芝生の上に倒され彼に抱きしめられた。
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