333人が本棚に入れています
本棚に追加
/215ページ
ーーガチャ…
俺が居間のドアを開けた時、あの女は暗い居間のソファーで待っていた。顔面が腫れ上がった俺を見てすぐに駆け寄って来た女。
「保!どうしたの、それ!誰に?」
すぐに駆け寄り傷を確かめようとする香織の手を無言のまま払いのけた。
「…」
「ねえ…保」
「どうしたの、それ?」
「…」
「あのさ…華とは別れてきたから…もう華にちょっかい出すのは止めろよ」
「な…何のこと?」
「とぼけんなよ!お前がいっつも華をいびってんの俺が知らねえと思ってんのかよ!?ずっと前から分かってたよ。そんなこと」
「そ、それが悪いこと!?」
俺の怒鳴り声に反応して声を張り上げて開き直る女。
「人のもの取った泥棒猫じゃないよ!あんな女…」
「はあ!?俺は物か!それに俺はお前のものになった覚えはねえよ!」
「そんな意味じゃ」
「じゃあ!どんな意味なんだよ!」
「…」
香織は食卓に綺麗に並べられていた、俺の誕生日を祝うケーキも料理も全てテーブルクロスごとテーブルの上から払いのけた。
部屋中に響き渡る陶器の皿やグラスが割れる音。
こんなこと慣れっ子になっている俺にとっては「またか…」という感情以外のものはなかった。
最初のコメントを投稿しよう!