262人が本棚に入れています
本棚に追加
「僕と結婚してください!」
休憩室のドアを開けた瞬間、店長が頭を下げ、私の前に手を差し出していた。
「こんな感じかな……」
店長は顔をあげ、唖然としている私と目が合い、さっと顔色が青くなる。
たぶん、一瞬だったんだろうけど、体感時間的には恐ろしく長く感じられた沈黙が流れた。
「ご、ごめんなさい!」
私はキレイな90度のお辞儀を披露し、ドアを閉めようとする。
「うわっ! 待って! 待って! 僕を犯罪者にしないで!」
店長は慌てて事情を説明した。
「実はさきさんにプロポーズをしようと思って、練習をしていたんだ」
「えっ、お、お二人は、そ、そういう関係だったんですか?」
私は驚いて、飲もうとしたお茶のペットボトルを、落としそうになる。
「改めて言われると恥ずかしいなあ」
店長は顔を赤くして、はにかむように笑う。
「ど、どれくらい付き合っているんですか」
「今年で3年くらいになるかな」
3年って結構長いなぁと、考えていたら、イッサが肩を揺らしてきた。
「エレナ、私がプロポーズ手伝いますって言いなさい!」
「な、なんで私が」
「うん? ど、どうしたのエレナちゃん」
最初のコメントを投稿しよう!