第5章 リアル壁ドン

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 16時。厨房から客席を覗くと、塩顔はまだ店内に残っていた。  冷静に考えた。こんな冴えない私に、イケメンがあんなことを言うなんて……新手の詐欺に違いない。ここは逃げてしまおう。  裏口から帰ることにした。ドアを用心深く開けると、誰もいない。外に出て、ガッツポーズをする。 「よし!」 「何がよしなんだ」  恐る恐る振り返ると、塩顔がドアの壁に寄りかかり、どす黒いオーラを放ち、腕を組んで立っていた。  やばい。殺されるかもしれない。頭の中の非常ベルが激しく鳴り、生命の危機を全身で感じる。 「ぎゃあぁ!」  逃げようとしたら、塩顔はだんっと壁に私を押し付け、逃げ道を塞いだ。  おかしい。壁ドンなのに全然ときめかない。 「人がせっかく2時間も待ってたのに、何帰ろうとしてんの?」 「さ、詐欺師ですか?」 「はっ? あんた何言ってるんだ?」 「と、とぼけないでください! どうせその気にさせて、後からお金を絞りとるんでしょ!」  塩顔はチッと舌打ちをした。ついに本性を現したな。 「おいっ、伊三郎! まだ話してないのかよ!」  塩顔が伊三郎と叫ぶと、イッサがひょっこりと現れた。 「あら、話してなかったかしら?」     
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