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「えっ、き、君、イッサが見えるんですか?」
「ああ? そうだよ」
「そんなことより政宗」
イッサは政宗を羽交い絞めにした。ミシミシと蛇が獲物を絞め殺すような音がする。
「私のことはイッサって呼びなさいって言ったでしょ」
「いたっ、痛い! おい、やめろ、筋肉おかま!」
「誰が筋肉おかまよ! イケメンお兄様に訂正しなさい!」
私はいきなりの展開についていけず、ただオロオロするばかりだった。
「ちょ、ちょっと、けんかしないでくださいよ」
一応、声をかけたらイッサが動きを止め、政宗から離れた。
「おおげさね。じゃれてるだけなのに」
政宗はバランスを崩し、派手に転んだ。
「げほっ、げほっ、はぁ、はぁ。くそ、あのおかま、いつか絶対、弱み握ってやる」
この子、私と同じことを考えてる。怖そうだけど、案外気が合うかもしれない。
「だ、大丈夫ですか?」
私は政宗を起き上がらせるために手を差し出した。
彼はきっとこの、極悪キューピッドのせいで、今までも理不尽な目にたくさんあってきたのだろう。そんな哀れみの気持ちになった。
「気安く触るな、根暗女」
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