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その姿は一切、恥じる様子がなく、むしろ堂々としている。正真正銘の変態だ。
「ちょっと! 何よその汚物を見るような目は」
男は私の視線に気がつき、ズンズンとこちらに迫ってきた。
「う、うわあぁ! く、来るな!」
非現実的な光景にパニクる。男との距離はわずか50cmだ。私は行き場を失い、フェンスにガシャンとぶつかりながらも必死に言葉を絞り出す。
「そ、それ以上こっちに来たら警察を呼びますよ」
警告の意味をこめてスマートフォンを見せると、男はため息を一つついて言った。
「呼びたかったらお好きにどうぞ」
男は逃げる様子もなく、涼しげな顔をしている。状況を理解できないほどばかなのかと思っていたら「呼んでもあなたが変な目で見られるだけだと思うけど」と、言った。
「な、何を言っているんですか」
変な目で見られるのは、トランクスで突っ立っているそっちだろう。
「だって私、『神様』だから普通の人間には見えないわよ」
全身に鳥肌が立つのを感じた。完全に危ない奴だ。
「信じられないって顔ね。じゃあ、証拠を見せてあげるわ」
男は屋上のフェンスをあっという間によじ登り、サーカスの綱渡りのようにその上を歩いてみせた。今にも落ちてしまいそうだ。
「あ、あ、危ないですよ」
いくら変態でも目の前で死なれたら目覚めが悪い。どうにか自殺を止めようとする私の必死な様子を見て、男は面白がっているようだった。
「うふふ、心配してくれてるの?」
「い、いいから早く降りて……」
言い終わらないうちに、男は飛び降りた。一瞬の出来事で脳の処理がおいつかない。
「ほ、本当に、と、飛び降りた」
私は腰の力が抜け、その場にへなへなと座り込む。自殺前に他人が死んでしまうなんて、どれだけついていないんだ。
「あはは! からかいがいのある子ね」
男はいつのまにか私の後ろに立っていた。よく見ると10cmほど宙に浮いている。
「な、なんで、ちゅ、宙に」
驚いて口を鯉のようにパクパクする私を見て、男は愉快そうに笑う。
「うふふ、まぬけな顔」
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