決められた運命

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何が起こるか分からない、それが人生の醍醐味(だいごみ)だというけれど。この世に生まれたその瞬間から、私の人生は決められていた。私が生まれたのは機械に囲まれた、連日轟音(ごうおん)が鳴り響く場所。そこには、私と同じ境遇(きょうぐう)を辿るものたちが大勢いた。ここで生まれたものたちにはまず、全員同じ衣服が与えられる。それから何十というグループごとに分けられ、狭い場所にぎゅうぎゅうに詰め込まれて、世界各国様々な所へと連れて行かれた。不特定多数の人の手で身ぐるみを()がされ、相手が望むままに体よく扱われた後、大半のものは役目が終わったからと捨てられる。取られた衣服を返してもらえるものはまだ良い方で、中には身ぐるみを剥がされたまま、不衛生な場所に捨てられるものもいた。時たま相手に受け入れられるものもいるが、それはほんのひと握りだ。自分の人生が儚いものだと知ってから、私は日々を怯えながら過ごしてきた。自身の周りからいなくなっていく仲間の存在だったり、外で実際に同じ人生を辿っていったのだろうものたちの末路を見たりすると、明日は我が身なのだと絶望に支配される。そして今日、とうとう私の番がやってきた。これから、どうなるのだろう。身ぐるみを剥がされ放り込まれた生温かい空間の中で、私はそう考える。受け入れられるのか、それとも(みじ)めに捨てられるのか。恐怖に震えながら審判を待っていた時だ。不意に、何かが自分に触れたのを感じたのは。 「だ、誰!?」 半泣きになりながら、私はそう叫んだ。私の様子に何ら動じることなく、その何かは体に(まと)わりついてくる。 (何だか、熱い?) 暫くして、先程まで冷たかった私の体が、 段々と熱くなっていく事に気が付いた。よく分からない現象に、恐怖よりも不思議に思う気持ちの方が強くなっていく。 「こんにちは」 突如そんな声がかかったものだから、私は酷く驚いた。 「ごめんなさい。驚かせてしまいましたか?」 声をかけられた途端に震えだした私にびっくりしたのか、先程の声は謝罪を口にする。相手の慌てた様子に、私は幾分か落ち着きを取り戻した。
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