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「あなたは誰ですか?」
そう質問する間にも、私の体はどんどん熱くなってきて、そのせいなのか、既に体の感覚があやふやになってきている。
「僕は、あなたと同じ運命を辿るものです」
相手は軽やかにそう言った。笑みすら浮かんでいそうな声音で話す相手に、私は戸惑う。
「あなたは怖くないのですか?自分の運命が」
思い出すのは、捨てられていった仲間たちの姿。一瞬後には私も、同じ運命だというこの相手も、捨てられた仲間たちのようになっているかもしれないのだ。
「怖いですよ」
相手は意外にも、はっきりとそう口にした。
「じゃあ、なぜそんなに落ち着いていられるのですか?」
「だってあなたがいますから」
その返答に、私は目を丸くする。今までを共に過ごしてきた仲間ならまだしも、今初めて出会った私がいるから落ち着いていられるなど、意味が分からない。
「僕は一人で最期を迎えることが怖かったのです」
私の驚きが伝わったのか、相手はそう言葉を続けた。
「でも今この瞬間、僕は一人ではありません。あなたがいます。それはとても幸福なことだと思うのです」
それは私にとって、目から鱗の発言だった。どんな境遇にあっても、僅かな希望を幸福だと言い切る相手の姿勢に、運命を恐れて嘆いてばかりだった自分が恥ずかしい。
「よく辛口だと言われる私でもですか?」
居たたまれなくて、ついそんな事を言ってしまった。私の言葉に、相手はやはり笑みを含んだ軽やかな声音で答える。
「僕は甘いとよく言われるので、きっと僕たちが一緒にいるのは、ぴったりだと思います」
私の憎まれ口に対するその態度に、いつしか全身を包み込む程になった熱さに思考が鈍っていることもあり、毒気が抜かれる。私は静かに目を閉じて、私がいるのがぴったりだという相手と迎える最期に、身を任せる事にした。
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