歳の数だけ

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 最初は思い出。次は声。名前、顔と続き、最後は存在そのものまで。日に焼けて薄れていく感熱紙のように、1年かけてゆっくりと彼の頭の中から消されていった。  あくる年は父親。その次の年は1人息子。小学校時代からの幼なじみ。部活動の後輩。学生時代の恩師。会社の同僚・上司。結婚式の仲人。はては昔付き合っていた彼女まで。    彼は見事に忘れていった。彼が心から大切に思っていた人たちを、毎年一人ずつ、確実に。
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