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その感動が、襲撃者の顔を見た時、不意に冷えていく。
「……大成くん? 」
最後に彼を見たディナーの映像と、今の顔が完全に一致する。
「タイセイくん、て誰? 」
優辞ちゃんは、銃を握りしめたまま聴いてきた。
「園田 大成くん。この学校のOBだよ!
でも、なんて変わり様だ」
髪を丸刈りにしただけじゃない。
大柄に育ったはずの頬も、痩せこけて。
「これまでの死傷者は、ゼロ。
誰も殺す気なんてなかったんでしょ?
いったい何があったの? 」
私が聴いても、大成くんは後手に縛られたまま、黙って座っている。
「あ、思いだした」
優辞ちゃんが言った。
「この人、大山さんのお嬢さんにフラれたって、うわさの人じゃない? 」
そうだよ。
大山 喜々ちゃんは、大山社長の一人娘で、大成くんとは幼な染だ。
うちのレストランの事件以後、自分で会社を興すため、この街を出ていったと聞いた。
「ふん。俺が聴いた話では」
他の子も話しだした。
「大山建設の若い社員が、革新的なプロジェクトを社長につぶされたって。
確か、隣町の図書館の建て替えだったかな。
おおかた、その腹いせだろ」
腹立ち紛れかな。
「私が聴いた話だとぉ」
周りの子もイライラしながら、また話だす。
そのどれもが、正確かどうかもわからない、うわさ話ばかりだ。
何らかの理由を見つけないと、不安で仕方がないのかもしれない。
当然か。
何の意味もなく襲われたなんて、恐ろしすぎる。
だが大成くんは、どんなに恐ろしげに言われても、相変わらず動かない。
自分には、どんな行動を起こす権利はない、とでも言う様に。
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