1人が本棚に入れています
本棚に追加
でも、あるうわさを聞いた時、それが変わった。
「その若い社員は大山社長の隠し子で、社長令嬢とは血のつながったきょうだいだから、無理やり別れさせられたって――」
「違う! 」
大きな声。
だけど、昔聞いた声より張りがなかった。
年齢以上に、老けた感じだ。
「ごめんなさい!
悪いのは、全部俺なんだ。
俺が小学生以下の、想像力も、協調性もないから。
子どもの様子を見れば、それを学べると思って。
だから昼休みに来た。
中学校を選んだのは、せめてもの自尊心だった。
でもやっぱり俺はバカだ。
何もわからなかったんだ……」
一息にそれだけ言った。
それから、また黙り込んでしまった。
私は、彼が実はドッキリを仕掛けていたとか、実は偽物だった。という証拠を探した。
でも、そんなものは、なかった。
「あの、ミオ先生」
おずおずした声で呼ばれた。
希少本を投げていた男子の一人。高松くん。
今学期からの転校生だ。
「銃撃そのものは、僕が原因。だと思います」
顔全体から、汗を吹き出しながら、話している。
「グラウンドの横の山を見ながら、散歩してたんです。
そこで、じっとグラウンドを見つめる男の人を見付けたんです。
その人が銃を持っていたから、驚いて大声をあげました。
でも、僕が銃を見慣れてないだけで、この辺りでは猟友会でありふれた物じゃないかと思い直して……」
本当に申し訳なく思っている様だ。
「あらためて、あいさつしようとしたら、大成さんが銃を撃ったんです。
無我夢中で走りました。
その時、クラスの友達が心配になって。
学校に入る人もいたから、ついて行ったんです。
考えてみたら、クラスのシェルターに入ってますよね」
高松くんの告白で、優辞ちゃんは嫌そうな顔をした。
「ちょっとまってよ。なんで銃を撃たれて、申し訳なく思わなくちゃいけないの? 」
私も思ったことを、怒りながら聴く。
「え? てっきり呼び止めるためだと」
「そんな人いるかよ! 」
最初のコメントを投稿しよう!