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「よく分かったね」
皆の目が、正解と答えた人を探して動く。
そのめは、大成くんに集まった。
私は、怒りが込み上げてきた。
「ナイフを突きつけて、おとなしくしろ! なんて、物語の中だけだよ! 」
素直に従っても良いことがあるわけがない。
人を殺せる武器を突き付けておいて、おまえは殺さない。なんて、自己矛盾……はなはだしい……し。
自分で言っていて、まだ、大成くんを信じたい気持ちがある。
戦闘モードを積み込んだNPCなら、こんな気持ちは無縁なんだろう。
私たちのシリーズは、一種類しかない。
そうやって蓄積した経験も、一つの作品という考えだからだ。
パトカーのサイレンが聞こえてきた。
ヘリコプターの風切り音も。
「ミオ先生! こちらですか?!」
校長が先生を2人連れて来てくれた。
校長は来年には定年するベテラン先生。
彼も私と同じ、大成くんを教えた1人だ。
シェルターが開いたらしい。
「俺たちが犯人を運ぶ!
お前たちは先に行け! 」
校長が、生徒たちを急かす。
「おい。そんな物騒なものを人に見せる気か?
置いて行け」
廊下に出た優辞ちゃん。
彼女がニヤついたまま持った銃や、銃弾が詰まったベストの事だ。
それらは、廊下の隅に置かれた。
「よく、頑張ったな」
児童たちにそう声をかけながら、若い先生2人が大成くんを左右から挟んで抱え上げた。
「……ミオ先生からメールをいただいた時、ウイルスに侵されたのかと思った」
そう言ったのは、校長。
子供たちがいなくなったら、急に弱々しくなった気がする。
それまでの強い仮面を脱ぎ捨てていたからだ。
「こうして目で見ても、信じられない」
私も、つらいですよ……。
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