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でも、犯罪者を捕まえた、という興奮は、子どもの心から。
特に優辞ちゃんの様な子からは消えないみたいだ。
「遅いぞ! 警察!
犯人はこの正樹 優辞様が捕まえた! 」
窓を開け、乗り出して手を振り回している。
それにしても、ヘリコプターの音がどんどん大きくなっている。
窓ガラスもびりびり震えるくらいだ。
優辞ちゃんの声は、ほとんど外に聞こえてないに違いない。
あの子は憎らしげに空を見上げて。
「……待てよ。あのヘリどこからきたの? 」
言われてみれば。
報道? 警察?
どっちにしろ、こんなに早く来るはずがない。
あ、そうだ。
「大山さんが、山奥の空き地においてたね」
趣味のために。
でも、それがなんでここに?
有線放送を見て、野次馬?
ヘリコプターの音は、学校の上で最大になり、そのまま動かない。
外で道を監視するカメラが、メガフォンで叫ぶ、警察官の声をとらえていた。
『怪しいヘリコプターが、屋上に着陸しょうとしているぞ! 』
カメラを上に向けた。
白くて丸い、二人乗りのヘリコプターが見えた。
軽自動車より小さな機体。
屋根から四方に伸びた支柱が、それぞれ1つプロペラを支えている。
なんだかまずい!
とにかくそう思った私は、優辞ちゃんの襟をつかみ、後ろへ引っ張りこんだ。
「グえ、なによ」
のどを閉めたから文句を言われた。
その直後、ヘリコプターは完全に屋上に着地していた。
「間違いない。大山さんの個人で持ってるヘリコプターが屋上に下りました」
一人、下りてきた。
その顔はタオルか何かをまいて覆面していて、分からない。
でも、その手に持っている物は。
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