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我が校のカウンセラーはいるけど、専門じゃない。
自分の教科と顧問の部活がある先生だから、手が回らない。
だから私が御用聞きみたいなことをする。
自分の力で解決できたときは、報告を上げるだけという事もある。
「加地ちゃん。しばらくここをお願いね。
(迷える子羊)ちゃん、図書準備室に行きましょう」
今日の相談は、恋のお悩み。
隣接された図書準備室なら、人はいない。
古すぎるが、時々遠くの図書館に貸しだされもする希少本が並ぶ本棚。
図書室を下支えする、貸し出し用QRコードと保護シール貼り機のような物。
それと、銃弾も通さない10人入りのカーボン製シェルター。
シェルターは、凶悪と言われる学校事件が起こるたびになされた整備の一つ。
肝心の恋のお悩みだけど、プライベートのため、詳細を知らせるのは勘弁して。
ただ、相手は困難に立ち向かおうとしている人。
自分から選んだ道が障がいになり、それゆえに諦めようか、それとも何らかの勝負にでようか。
その事は、覚えておいてあげて。
これ以上の事は、同業者AIのネットワークにもあげてない。
私の内部メモリーにだけ、詳細は残される。
ただし、ネットワークには恋愛関連の問題が起こったことと、成功したか、失敗したかは書く。
もし成功なら、そのファイルには協力が可能であることを意味する☆マークを付ける。
こうすることで、他校のAIは、恋愛ごとなら私に相談できるのだ。
この問題での私の☆の数は、5年で52。
特に多いわけではないけど、同じような環境の学校からはときどき相談がくるよ。
「さて、伺いましょう」
そうやって、思ってもいない事でもあり、いつもでもありえる事態に対処しようとした時、それは起こったの。
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