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大柄な生徒が、泣きじゃくるその子を背負い上げた。
「ミオ先生! 僕が運びます! 」
池田 告春(いけだ つぐはる)くん。
野球部のキャプテンだ。
池田くんは人1人をかついだまま、階段を駆け下りていく。
その動きは、俊敏そのものだ。
「やっぱり、かっこいいな」
やってきた優辞ちゃんが、ほれぼれとそう言った。
そうだね。
彼がけが人を連れて行ったら、他の人たちも引きずられるように足を速めて行った。
気配だけで人を動かす。あれこそヒーローだ。
でも彼、小柄な子が好みなんだよな……。
「いや待て、なんで優辞ちゃんがここにいるの? 」
「それは、池田くんの声がしたから」
「そんなこと、してる場合じゃない! 」
私は優辞ちゃんを図書室に押し戻して、戸を閉め、鍵をかけた。
……今、私が優辞ちゃんに不義理を働いたのは、秘密だ。
その時、再び銃声がした。
今度は、もっと近いところから。
「学校AIが、監視カメラの映像を送ってきた。給食室から」
無人となった広い食堂。
さっきまで食べられていた料理がそのまま残っていたり、床に飛び散ったりしていた。
その真ん中で立っているのは、頭を丸刈りにした大柄な男だった。
この街にある町営テレビ局にも、この映像は瞬時に送られる。
重要度を考えると、テレビもメールも強制的に受診され、放映されるはずだ。
近所の人。どうか、みんなに声をかけながら逃げきってください!
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