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男が、いらいらした様子であたりを見回し、走りだす。
「教室のある校舎に向かうみたい」
前に突き出た黒い棒は、明らかに鉄でできている。
映像を拡大すると、鉄の棒は2本で、上下に並んでいた。
「襲撃者は、散弾銃を持ってる! 」
1本の銃身に、1発づつ弾丸を込められるやつだ。
学校のAIも、散弾銃だと解析していた。
そんなのは、わかってる。
私のオーナーたちも、猟友会として山の中でジビエを狩るのを、いくらでも見てる。
「今、下に下りたら、鉢合わせするよ! 」
図書準備室から、悲鳴と言葉が合わさった声がした。
「シェルターも準備室も、もういっぱいだぞ! 」
みんな、全力で叫び声や泣き声を上げていた。
「仕方ない! ドアを閉めて! 」
なぜか、優辞ちゃんが仕切り始めた。
「優辞ちゃん! どうするつもりだ!? 」
「シェルターにはいれなくても、天井まで詰まった分厚い本が守ってくれる。
分厚い辞書を2冊ぐらい重ねれば、盾になるって、テレビでやってたよ! 」
……たしかに。
こんな時にパソコンは無意味だ。
「散弾銃は広い範囲に丸い球をまき散らすのが一般的だから、貫通力は低い!
自殺するつもりで顔を撃った人が、視力も失わずに生き延びた例もある! 」
図書準備室のみんなは、優辞ちゃんに従うことにしたようだ。
あんたも、なかなかのカリスマ性だな。
で、私たちはどうするの?
優辞は、私をじっと見つめている。
「まさか、私を盾に!? 」
そんなことはなかった。
私の後ろにあった分厚く大きい国語辞典。
学校にある一番、大きい本に盾になってもらった。
そして、窓際に並ぶイスと机の所に隠れる。
廊下側には、背の低い本棚が並んでいる。
でも児童向け文庫本ばかりが詰まっているから、隙間が大きい。
大丈夫かな。とにかくそこに隠れた。
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