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パツパツの紺のポロシャツにオレンジのエプロンを無理やりつけた、店長と名札のついた太い男が、カウンターに座った俺の目の前に無愛想にお茶を置く。
「牛丼一つ、つゆだく、肉ましましテイクアウトで」
肉ましましなんて今の会社に入るまで食べられなかった。
牛丼の肉にさらに肉を足すなんて考えられないほどの贅沢だ。でも、最後くらいこれくらい食べてもバチは当たらないだろう。
そう思っていると、ドスンと目の前にどんぶりが置かれた。
「テイクアウトを頼んだんだけど」
目の前にはつゆだく、肉ましましの牛丼に加えて、味噌汁が豚汁に変わり、卵の小鉢もついていた。
「食ってけよ、俺のおごりだ」
「店長……」
俺は涙を流しながらかき込んだ。食べている途中でむせたけれど、水でなんとか流し込んだ。
「うまい、うまいよ……」
牛丼がこんなに美味いと感じたのは生まれて初めてだった。
「まぁ、頑張れよ。よくわかんねぇけどさ」
うん、うん、と頷きながら箸を進める。
三ヶ月前、俺はこの牛丼屋でバイトをしていた。店長とも毎日ゲームやアニメの話をして楽しく過ごしていた。ひどく退屈でそれがとても心地よかった。
ある時、俺に好きな人ができた。オフ会で知り合った女の子で、顔はブスだったけれど肌は白くて巨乳だった。いつしか俺は彼女に恋をしていた。
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