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親友
──いつもの帰り道、いつもの時間。
「……ねえ」
「ん? なに? 」
俺は他愛ない会話の合間に呼び掛ける。
「俺たち、ずっと一緒だよね? 」
「今更何言ってんだよ、当たり前だろ」
大人になっても言えるだろうか。
誰かを好きになって、一緒の時間が減る。
そんな日はそう遠くない気がしていた。
「卒業してもおなじ大学いくじゃん」
「そう、だよね」
分かってない。
大学に行ったら、今以上に女子も多くなる。
人当たりがよくてムードメーカーなコイツはモテるに決まっている。
今だって人気があるのに、ずっと俺に付き合ってばかりいた。
「俺たち親友だろ? おまえ以上に仲良いやつなんて早々現れないって」
「だよな、そうありたい」
「なんだよ? さっきから。隠すような間柄じゃないだろ」
俺の変化に気遣ってくれる。
でも、気が付かれちゃいけない。
「おまえの人気に嫉妬してるんだよ、この! 」
苦し紛れに首に肩を回す。
「はあ? 馬鹿じゃないの? おまえ知らないだろ? 女子が遠巻きにおまえ見て『カッコイイ』って言ってんの」
知らなかった。悪くは無いと思うが、自信はない。
高めの柔らかい声、甘いマスクにみんな殺到しているものだとばかり。
俺といえば、低いわけではないけど高くはない。
笑うのだってなかなかできない。
「何それ? 知らない」
「カッコイイ! クールって感じぃ! 」
女の真似をするコイツ。違和感なくて可愛いと思ってしまう。
「は? 」
言えるわけなくて、裏腹なことを言ってしまった。
「キモイとか言うなよ? そんなん聞かされる身にもなってよ」
溜息混じりにいう。
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