明日の約束。
「あなたはあたしのはじめてのおともだちよ」
そう言って白い息を吐きながら、君は僕に帽子を被せてくれたね。
「みて、あたしはぴんく。あなたはぶるー。おそろいなの」
そう言って君は僕に手袋をくれた。
「ままー、いっしょにおしゃしんとって!」
君と一緒に写真を撮ったよ。
「ね、あしたははれるかな? はれたらいっしょにおままごとしようね」
僕は嬉しくて。君との約束が嬉しくて、思わず目が溶けてしまうかと思ったんだ。
「あした、おしゃしんできたらもってくるね」
君との『明日の約束』が増えていく度に僕は嬉しくて、そして、空を見上げる。
「みて、ひこうきぐも」
ああ、空が青い。小鳥たちが鳴いている。木々に新緑が芽吹いている。
もうすぐ春が来るのだ。
「あのね、あしたはゆきうさぎさんをい~っぱい、つくってあげるね」
おともだち、たくさんほしいでしょう?
そう言って君が笑った。眩しいくらいの素敵な笑顔に僕は胸がいっぱいになる。
僕は知っている。僕に明日は来ないことを。
明日はいいお天気なんだって、さっきママさんが言っていたから。
「ゆきだるまさん、だあ~いすき!」
ああ、君が泣かないといいなあ。
そして僕が溶けてしまっても忘れないでいてくれるかなあ。
大好きだよ。遊んでくれてありがとう。
僕も君が、はじめての友達だよ。
朝の光に包まれて微睡んでいると、遠くから声が聞こえた。
「ゆきちゃん……ゆきちゃああーーんっ!」
君の声だ。
それは僕の名前かな。
「ゆきちゃん、いかないで」
もっと呼んで。僕の名前。
「ままー、ゆきちゃんがとけちゃうよおおおっ」
君が僕を抱きしめる。
僕は初めての温もりに目を閉じた。
君がつけてくれた木の実で出来た瞳はもう落ちてしまったけれど。
君とおそろいの手袋はもう落ちてしまったけれど。
君が泣いてくれたから。
僕はなんだか嬉しかったんだ。
ねえ、ちーちゃん。
さよならは言わないよ。
また、僕をゆきちゃんって呼んでね。
『明日の約束』は守れなかったけれど。
また、冬が来たら、一緒に遊ぼうね。
だから。またね、ちーちゃん。
『明日の約束』おわり
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