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ここは新宿二丁目、
色んな人が、色んな形で楽しめる場所。
そこのとあるビルの
2階にある小さなBAR。
看板代わりの『liberte』
という字が点灯し、
小さな鐘のついたドアを開ける。
カランカランと音がなり、
私を迎えてくれる。
「ごめんね、千咲呼び出して。」
店主のナルさんが声を掛けて来た。
見かけは、アタマを2ミリ位に剃り、
髭が生えていて強面なのだが、
中身は乙女で、優しい方なのだ。
「おはようナルさん、
いいよ、聡でしょどうせ。
それにしても今日は暇だね~。」
いつもなら、この狭い空間に、
人が集まっているのに今日は、
私と、あと一人。
「2月だもの、何処も暇よ。」
「流石二・八だけあるわ。
よいしょっ、何かオススメのお酒頂戴。」
私はカウンターの高い椅子に座り、
ナルさんにお酒を所望する。
「甘いの?辛いの?」
「甘いので。ナルさんも何か飲んで。」
「ありがとう、頂くわね。
聡、千咲来てくれたわよ、起きなさい。」
もう1人の私を呼びつけた男、聡。
もう結構呑んでいるらしく、
机に突っ伏していた。
「ん~……よう千咲。」
目を真っ赤にして此方を向いた。
「ようじゃないし、何?」
「予想出来てると思うけど彼氏。」
ナルさんはカチャカチャとお酒を
作りながら、聡の話しをする。
「女を部屋に連れ込んでるから、
帰ってくるなって言われたみたいよ。」
「はぁ?それでノコノコ出てきた訳?
ばっかじゃないの?」
「まぁまぁ千咲、同性同士の恋愛って、
難しいのよ。」
と、青色の綺麗なカクテルを
差し出してくれた。
ナルさんと乾杯しそれを口に含んだ。
「俺だって、アイツが
本気じゃないのは分かってる。」
「なら、何で別れないの?」
「しゃーねぇだろ……。」
聡は髪をぐしゃぐしゃとして、
ウイスキーのロックをグビっと飲んだ。
「ホントバカ過ぎて呆れる。
働いたお金もほぼ取られて、
追い出されて、ほっとかれて、
そんな奴の何処が好きなの?」
「……。」
悲しそうな顔をし、聡は何も言わない。
「私は、聡の気が済むまで一緒に
居たら良いと思うわよ。
傷ついても後悔したくない
気持ち分かるから。」
私には全然わからない、
そんな人とは1秒たりとも
一緒にいたくない。
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