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それもそうなのかもしれない。
私は恋を捨てたんだ。
分かり合おうという方が無理な話だ。
でも、私達はこうやって共にいる。
「千咲、すっごい猫鳴いてない?」
ふと、聡が言う。
マンションにつく前にある、
昔からあるちょっとした住宅街。
のら猫結構いるんだけど、
と思ったが聡が興味を示したので、
しょうがなく答えた。
「子猫かな?この辺よくいるから。」
「ちょっと行ってみようぜ。」
「えーやだよ。」
「いいじゃん、いいじゃん。」
聡に手を引かれ猫の鳴くほうへ行く。
古い平屋の一軒家の所で、
猫が3匹鳴いていた。
恐らく、親猫に子猫2匹。
「可愛いなー。」
聡は満足顔で笑っていた。
確かに可愛いけど、野良猫なんか
沢山居すぎて何にもして
あげられないから、
基本的に避けるようにしている。
「おいで、ご飯だよ。」
私達以外の誰かの声がする。
平屋の住人だろうか。
キィという音とともに、
玄関から高校生位の男の子が顔を出した。
猫達は走ってその子に甘えに行った。
「可愛いね、君んちの猫?」
聡はお構い無しに、男の子に絡みにいく。
「ちょっとこの酔っ払い!
辞めてよ、もう帰ろ。」
私は引っ張って帰ろうとしたけど、
僕は大丈夫ですよと
男の子は、はにかんでそう言った。
男の子が猫用の缶ずめのご飯を
カチッとあけてお椀によそう。
猫達は今か今かと、大合唱で鳴いていた。
私はよく分からないまま、
猫達の食事を鑑賞することになった。
とても美味しそうに咀嚼している。
「いつもこんな時間にあげてんの?」
聡はご飯に夢中の猫を撫でながら聞く。
「いえ、今日は、たまたまで……、
というか、僕んち猫飼えないのでたまに
ご飯をあげてるだけです。」
私はその言葉に怒りを覚えた。
「無責任じゃない?
飼えもしない癖にこんなことして。」
「おい、千咲、言い過ぎ。」
「貰い手を探してるんですが、
見つからなくて…。」
「それは言い訳。
飼えないなら最初からこんな事すんな!」
お酒の勢いもあったのか、
知らない男の子に怒鳴ってしまった。
どうでもいいか。
こんな所もう用はないし、
さっさとマンションに帰る。
聡は男の子に謝って着いてきた。
「マジどうしたんだよ…?」
「いいじゃん別に。」
そういって聡の腕を強く握った。
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