すきなひと

『すきなひと』

そんな曖昧な言い方なら何人だって会ってきた。
家族だって、友達だって、先生だって。
みんなみんな『すきなひと』。

『すき』って言葉は曖昧で、日本語って曖昧で、そのくせ伝わるまでも曖昧で、難しくて。

なのに『恋』って言葉だけは別。
切なくて甘くて、悲しくて……曖昧な言葉を詰め込んだら言葉の最上級品に変化した。

最上級品を自分だけで味わうなんてもったいない。
彼にも届けよう。贈ろう。

……拒否する言葉が聞こえるかもしれないけれど。