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それは正に轟音だった。
松藤さんの声は狭い部屋の中全体に響き渡った。
旧幕府軍の兵は皆、俺達に向けた刀を捨てざるを得ない状況に陥り、耳を塞ぐのに精一杯だった。
更に木材の壁は音の反響により、破壊され、松藤さんの目の前にいた兵達は吹き飛ばされてしまった。
「活路が開けもした。おいにしっかと捕まってくいやい」
松藤さんはそう言って俺を担ぐと、すぐさま『瞬足』を発動させた。
俺が驚く間もなく、いつの間にか大阪城が見える高台へと来ていた。
何とかこの窮地を脱する事ができた。
しかし、今の俺は安堵する暇はなかった。
突然、吐き気に襲われ、物陰に隠れて嘔吐してしまった。
素早い速さによる酔いのせいだ。
松藤さんは俺の背中を擦りながら謝った。
「すんもはん。じゃっどん、あの場はああするしかありもはんじゃした。許してたもんせ」
背中を摩ってくれたお陰で、少し気分が治った。
俺はゆっくりと姿勢を整えると、まず助けてくれた松藤さんにお礼を述べた。
「助けてくれてありがとうございます。しかし、計画は漏れていましたね」
松藤さんは深く頷き、俺に一方的に話していた男について説明してくれた。
「あん男は湯崎夜久郎。新撰組の諜報担当にして、霧島党の幹部の一人でごわす」
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