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「あ、でもやるのは私じゃなくてこの子なの」
少女はそう言って自分の左上を指差した。
だが、目を向けてもそこには何もない。
「あ、そっか……うん、見えないならいいよ。その方が怖くないだろうし」
よくわからなかったが「そうか」と適当な返事をした。
私が聞いた所で意味はない。
私は、死ぬのだから
「私はね、"視る"だけなんだ。
だから、直接は殺さない。
……準備はいい?おじさん」
コクンと頷く。
すると、少女は先程指差した所に合図を送りー
同時に見えない何かが私へと振りおろされた。
目を閉じると頭に過去の走馬灯が走った。
初めてのデートで奮発して行ったフランス料理屋
……初めてなのに気合い入れすぎって笑われたっけな…
一緒に歩いた公園。
……子供達がそれぞれ結婚してからは夕方に歩くのが日課だった。
子供の出産。
……えらく長い時間がかかったせいで私の方が気が気じゃなかった。
はは…なんだか順番がめちゃくちゃだ。
全く…。
20年家族とお前のために生きてきたはずなのに…お前が先に行って私にどうしろと言うんだ?
だから、私も今そっちに逝こう。
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