さよならの序曲──透視点

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自室に向かう途中で、不自然にわずかに万琴さんの部屋のドアが開いていて、よくないと思いながら中をこっそり覗いた。 「!?」 声にならない声が上がりそうになって、思わず両手で口を押さえる。 けど、目は部屋の中の様子に釘付けだった。 中では二人の男と全裸で交わる万琴さんがいた。 その表情は恍惚としていて、俺とする時よりも嬉しそうに見えて、自分はここまで万琴さんを悦ばせることはできなかった。 こんなに感じる万琴さんの姿も表情も見たことない。 自分が万琴さんを満足させてないんだと知ってから、どうして自分がセフレのままなのか分かったような気がした。 そりゃ、あの二人より拙くて満足させてあげられないなら、恋人になんかなれるはずがない。 俺が恋人だったら重いだけで下手くそで即別れることになりそうだ。 情けなさと万琴さんの本当の姿を見て、この前の"好きになんてならなきゃよかった"は何だったのかと思う。 こんな現実を叩きつける為だったら、浮かれないでスルーすればよかった。 足音は立てずに自室に戻って、極力音に注意しながら、服を着替えて財布と鍵とスマホだけ持って外に出る。 あの家は俺がいていい場所じゃない。
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