さよならの序曲──透視点

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その決意を固めて、万琴さんとずっと話し合った。 「すみません、俺はルームメイトを解消させてもらいます。詮索してもしなくても、見てしまったことはなかったことにはできませんから…」 「……僕が何を言っても言い訳にしかならないだろうから、僕からは何も言うべき言葉はないよ」 「そうですか…」 言い訳の一つでもしてくれた方がよかった。 自分の行動を無言で正当化なんてしてほしくなかった。 自室に戻って鞄に服を詰め込んで、会社には有給を取ると連絡する。 急ではあったけど、快く承諾してくれて、感謝してもしきれない。 一週間という長い有給だけど、俺は実家に久しぶりに戻ることにした。 年末とかゴールデンウィークすら、ここ数年は顔を見せていないし、ちょっとした親孝行と思えば。 「さよなら弓槻(ユヅキ)さん」 「透!?待っ…!」 「俺が一番嫌いな人は嘘つき。最後まで何で騙してくれなかったんですか?ひどいよ…」 「透…」 以前、万琴さんが言っていた言葉をそのまま伝えると、俺は万琴さんを見ることなく、少し多めの荷物を手に、シェアハウスを後にした。
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